「低コストで超高温を実現する『太陽光励起レーザー』」で紹介したように、太陽光励起レーザーを使えば、単純に太陽光を集光するよりもはるかに高い温度を実現することができます。
下の動画は、2009年1月に東京工業大学の屋上で行われた太陽光励起レーザーの実験風景です。この時出力されたレーザーの出力は50W。この程度の出力であっても、0.1mm厚のステンレス板にいとも簡単に穴を開けることができてしまいます。
さらに次の動画は、太陽光励起レーザーで酸化マグネシウムを還元しているところです。レーザーの焦点が酸化マグネシウムの表面に合ったときに、煙のように蒸発するマグネシウムが見えます。製錬を商業化するにはまだ不十分な出力ですが、酸化マグネシウムの還元自体は可能であることがわかります。
「レーザーでマグネシウムを製錬できるか?」という記事では、酸化マグネシウムにレーザーを照射することで粉末表層が蒸発し、金属マグネシウムだけ取り出せることを紹介しました。
下の動画は、1kWのレーザーを酸化マグネシウムに0.5秒間照射した様子を、1/60で高速度撮影したものです。レーザーによって酸化マグネシウムは一瞬で気化しますが、この時、気化した物質は垂直に立ち上ります。そのため、気体から特定の元素だけを比較的容易に取り出せるのです。
現在、蒸発して回収した物質のうち、30%が酸化マグネシウム、70%が金属マグネシウムです。つまり、純度70%のマグネシウムをレーザーで製錬できています。マグネシウムを燃料として使う場合には、70%の純度でも十分です。ちなみに、ピジョン法でも最初に製錬されるマグネシウムの純度は80%程度で、それから高純度化の処理を行っています。
マグネシウムのリサイクルはできるとして、マグネシウムそのものはどうやって調達すればよいのでしょう? エネルギー通貨として流通するほどの量を現在と同じようにドロマイトなどの鉱石を採掘して調達しようとすれば、採掘だけでも膨大なエネルギーとコストがかかります。
私たちは海からマグネシウムを生み出す計画を練っています。海には1800兆トンというマグネシウムがイオンの形で含まれています。海水を濃縮すれば塩化マグネシウム(にがり)が得られることはご承知でしょう。つまり海水を濃縮してマグネシウム化合物を取り出し、これに太陽光励起レーザーを照射して、純粋なマグネシウムを生産するというわけです。
海水中の塩化マグネシウムは含水性塩化マグネシウムと呼ばれ、水が結合しています。加熱すると水が除去され、酸化マグネシウムになります。あとは、リサイクルのプロセスと基本的に同じです。酸化マグネシウムと同時に得られる塩酸は、液体なので扱いは難しくありません。

炭酸ガスレーザーでマグネシウムを製錬
私たちは太陽光励起レーザーで400W〜lkW級が達成できたとして、実際にマグネシウムを得ることができるのか、別タイプの実用レーザーを使って実験を行っています。400W/1kWの炭酸ガスレーザーを酸化マグネシウム粉末に0.2秒間照射すると、粉末表層が蒸発、そのガス中の30%がマグネシウム原子であることを確認しました。ここで重要なのはどれだけ効率よく純粋なマグネシウムを作れるかという点にあります。できたマグネシウムの燃焼で得られるエネルギーを生成にかかったレーザーのエネルギーで、割った値を「エネルギー還元効率」と言います。これが大きいほどよいわけですが、実験データから求めた値は45%で、目標値50%にかなり近い成果を得られています。
世界のマグネシウム生産は年間約60万トン。うち7割が中国産で、熱還元法という方法で製錬されています。熱源は石炭火力。マグネシウムを1トン製錬するのに、石炭が約11トンも必要と言われます。エネルギー多消費型のプロセスです。
マグネシウム製錬では、フェロシリコンなどの触媒を使うのが「常識」です。酸化マグネシウムにおける酸素とマグネシウムの結合を千数百°Cという比較的低い温度で断ち切るには、この触媒が欠かせません。マグネシウムの蒸発に必要な潜熱や原子間の結合エネルギーに相当するエネルギーなどを合わせると、本来なら20000°C相当のエネルギーを与えなければ反応が起こりません。逆に言えば、20000°C相当のエネルギーを与えれば、触媒なしで酸素原子とマグネシウム原子の結合が自然に切れるということになります。



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