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2011年10月19日、東北大学と産業技術総合研究所、日向市は、JR鉄道総合研究所旧リニア実験施設(日向市美々津町)で、太陽熱を利用したマグネシウム製錬の実証実験を開始した。
太陽エネルギーを利用したマグネシウム製錬技術としては、東京工業大学 矢部孝教授らの太陽光励起レーザーによるレーザー製錬法がある。一方、東北大学 未来科学技術共同研究センターの小濱泰昭教授らは、凹面鏡で太陽光を一点に集光する太陽炉を用いる点が異なる。小濱教授らのチームは、マグネシウムを用いた燃料電池の開発も進めており、試作品として、電圧6V、電流2A、容量30Ahのものをすでに開発済みである。実証実験について小濱教授にうかがった。(取材・構成:山路達也)


■太陽熱を利用したピジョン法でマグネシウムを製錬する

–東工大のチームは太陽光励起レーザーによって酸化マグネシウムを気化させ、金属マグネシウムの製錬を行おうとしています。これに対し東北大学では、太陽熱を使い1200℃で製錬を行うそうですが、どのような方式でしょうか?

現在、マグネシウム製錬の主流はピジョン法です。この方法によって中国は世界におけるマグネシウム生産量の8割を占めるに至りました。ピジョン法では石炭で1200℃の高温環境を作り出し、フェロシリコンという触媒を使って反応を進めます。私たちが当初行うのもフェロシリコンを使ったピジョン法で、宇部興産の技術指導を受けています。

–フェロシリコンを使うということは、それを作るためのエネルギーも別途必要になるということでしょうか。

はい、製錬とは別にフェロシリコンを作るためのエネルギーが必要になります。最初の段階では、石炭を使ったピジョン法に比べて、(二酸化炭素を排出しないため)環境負荷が低いということを売りにするしかありません。
ただし、研究スタッフには炭素還元技術の専門家がおり、最終的にはフェロシリコンを使わない方法を目指します。

–凹面鏡で太陽炉に集光するということですが、効率はどうでしょう?

1960年代、東北大学は直径10メートルのパラボラ鏡で構成される太陽炉を制作し、物性研究を行っていました。この太陽炉は4000K(3727℃)の温度を達成しており、当時世界トップクラスの性能を達成していたのです。
もっとも、酸化マグネシウムを還元するのに4000Kまで温度を上げる必要はありません。太陽炉内部を減圧し、魔法瓶のような真空層で熱の対流と伝導を防ぎ、さらに膜を使って輻射を防ぐことができれば、温度は1200℃で十分だと考えています。

–酸化マグネシウムの沸点は3600℃です。それならば、3727℃の太陽炉を使った方がよいのではないでしょうか?

エクセルギー(有効エネルギー)の考え方はご存じでしょうか? エクセルギーを使って考えると、できるだけ低い温度で化学式を工夫して反応を進めた方が最終的な効率はよくなるのです。
ピジョン法ではうまく圧力と温度を調整することで三重点(ある物質の固体、液体、気体の状態が共存できる温度と圧力)特性を利用し、比較的低い温度でマグネシウムの気体を取り出しています。
日向市の実験では、産総研から譲り受けた小型の太陽炉を使い、70%のエネルギー効率を目指します。

–反射板は、戦艦大和の探照灯用に製造されたものだということですね。

そうです(笑)。産総研の担当者から、70年前に大和の探照灯の予備部品として製造されたものとうかがい、驚いた次第です。

■難燃マグネシウム合金で、燃料電池の性能が向上

–マグネシウム燃料電池についても、東北大で研究しているのですか?

はい、古河電池と共同研究しており、すでに特許も申請済みです。現在、電圧は直流6V、電流は2A、容量は30Ahの試作品ができています。これは空気中の酸素とマグネシウムを電気化学的に反応させる燃料電池です。

–二次電池(充電池)ではなく、一次電池ですか?

はい。

–マグネシウムの実証実験には産総研が参加していますが、どういう部分を担当しているのでしょう?

産総研 中部センターの坂本 満博士は、20年に渡ってマグネシウムの難燃化を研究してきました。
私たちは、別プロジェクトとして「エアロトレイン」の研究を進めているのですが、この車体には難燃マグネシウム合金を使って軽量化を図っています。
マグネシウム燃料電池に難燃マグネシウム合金の一種を改良して使ったところ、通常の金属マグネシウムよりも性能が格段にアップしたのです。これには驚きましたよ。さっそく国際特許として申請準備に入りました。

–難燃化処理には、エネルギーが必要ですか?

当然通常の製錬に加えて、新たなエネルギーの投入が必要になります。
ただし、私は「エネルギーはゆりかごから墓場まで」とよく言うのですが、エネルギー効率は燃料電池の効率も含めて、サイクル全体で評価する必要があります。その意味でも本プロジェクトには優位性があり、総合効率が高いのです。そして、難燃化しなければ、マグネシウムという金属は危険極まりない物質なのです。空気中の酸素と反応して爆発燃焼する物質であり、昔は写真撮影時にフラッシュとして利用されていたくらいです。
(注:マグネシウムの危険性については、こちらの記事も参照のこと)

■翼を備えた超高速鉄道「エアロトレイン」

–マグネシウム製錬の話から外れるのですが、エアロトレインについて少し聞かせてください。小濱教授はJR東海が進めているリニアモーターカーに否定的ですね。

複数の技術を競合させていたら、現在進められている磁気浮上式リニアモーターカーが選ばれることはなかったでしょう。リニアモーターカーのエネルギー効率は、よく見積もっても蒸気機関車と同程度で10%以下なのです。ちなみに、電車のエネルギー効率は40%台です。
私たちが研究しているエアロトレインは時速500kmで走行しますが、消費エネルギーは新幹線の1/3、リニアモーターカーの1/9で済みます。これは旧運輸省による評価です(平成10年3月、交通エコロジー・モビリティ財団「地球温暖化防止に資する新たな交通システムに関する調査」報告書(日本財団補助))。レールなどを含めた建設費についても新幹線並みで、リニアモーターカーより格段に安いと評価されています。
結局、リニアモーターカーは原発ありきのプロジェクトだったわけです。現在の状況であのようなプロジェクトにゴーサインを出すのは馬鹿げていると思いますよ。原発事故を受け、政府は企業に対して一律に15%の節電を課しているにもかかわらず、JR東海には大飯ぐらいのリニア建設にゴーサインを出している。行政として、首尾一貫していないと言わざるを得ません。

–エアロトレインの車体研究から難燃マグネシウム合金、そしてマグネシウム燃料電池、太陽炉による製錬へとつながってきたのはとても興味深いですね。太陽光励起レーザー以外にも、新しいマグネシウムの製錬方法が登場してきたことで、マグネシウム循環社会のビジョンも注目を集めることになると期待しています。

技術は競争することで、進歩していきます。現在、太陽エネルギーを利用したマグネシウム製錬法は、東工大方式の太陽光励起レーザーと、東北大学方式太陽炉の2つしかありません。研究者同士、意見交換しながら競争し、日本の国家プロジェクトに仕上げていきたいですね。

One Comment to “太陽炉によるマグネシウム製錬実証実験を東北大学が開始”

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